【立体タイルでつくる陰影の美】スペインのタイルメーカーHARMONY(ハーモニー)と建築家コラボ「DOCS(ドックス)」が魅せる、壁面の新しい表情
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インテリアにおいて、「壁」の存在感はここ数年で大きく変わってきました。単なる空間の仕切りや背景ではなく、空間の印象そのものを決定づける要素として捉えられるようになっています。
そうした流れの中で注目を集めているのが、表面に凹凸のレリーフをを持たせた「立体タイル(3Dタイル)」や「リブタイル」です。
平面的なクロスやタイルでは表現できない「光と影の移ろい」を生み出し、空間に圧倒的な奥行きを与える立体タイル。今回は、スペインのタイルブランドHARMONYから、気鋭の建築家・デザイナー Sigfrido Serra(シグフリド・セラ)とのコラボレーションによって生まれた最新コレクション「DOCS(ドックス)」をご紹介します。

ただの建材ではなく、「記憶の建築」としてデザインされたこのリブタイルが、どのように空間を格上げするのか。照明計画や施工のポイントを含め、その魅力と活用法を徹底的に紐解きます。
なぜ今、「立体タイル」が選ばれるのか?トレンドと心理的効果
近年、ホテルライクな住宅やハイエンドな商業施設で、立体的なデザインタイルの採用が急増しています。参考となる施工事例を見ても、フラットな壁面の一部に立体タイルを取り入れる手法が多く見られます。なぜこれほどまでに注目されているのでしょうか。
1. 「陰影」が生むドラマチックな演出と時間の流れ
立体タイルの最大の魅力は、照明との相互作用です。ダウンライトや間接照明がタイルの凹凸(リブ)を照らすことで、壁面に美しいグラデーションが生まれます。
朝の爽やかな自然光では彫刻のようなシャープさを、夜の暖色系の照明では柔らかく包み込むような表情を。時間帯によって表情を変える壁は、住空間に「時間の移ろい」という豊かさをもたらします。
2. 「タクタイル(触覚的)」なデザインへの回帰
デジタル化が進む現代において、インテリアデザイントレンドは「見て触れて心地よいもの」へと回帰しています。これを「Tactile - タクタイル(触覚的)デザイン」と呼びます。
ミニマルな空間ほど、素材の質感が際立ちます。塗装やクロス仕上げの平滑な壁の中に、陶器質の艶やかさやマットな土の質感を備えた立体タイルが入ることで、空間に心地よいリズムと「本物感」が加わります。

3. 建築的なアクセント効果と視覚トリック
「リブタイル」と呼ばれる縦溝のデザインは、視線を縦に誘導するため、縦張りをした際により天井を高く見せる視覚効果があります。また、空間の特定の部分(フォーカルポイント)に使用することで、視線を集め、空間全体をモダンで建築的な印象に引き締める効果があります。
建築家が描く「秩序の美」。DOCSコレクションとは
一般的な立体タイルとは一線を画すのが、HARMONYの新作「DOCS by Sigfrido Serra」です。
デザイナー:Sigfrido Serra(シグフリド・セラ)

バレンシアを拠点に活動するインテリアデザイナー兼建築家。10年以上のキャリアを持ち、自身のスタジオ「Sigfrido Serra Studio」や「SINMAS studio」を主宰。「デザインは見るだけでなく、解釈するものだ」という哲学のもと、創造性と革新性を融合させたプロジェクトを数多く手掛けています。
彼のプロジェクトは常に、そこに住まう人々の「体験」を中心に据えており、単なる装飾ではない「意味のあるデザイン」が高く評価されています。
コンセプト:Architecture of memory(記憶の建築)
DOCSコレクションのテーマは「Beauty of order(秩序の美)」。
彼はこのタイルを通じて、壁を単なる面から「視覚的な物語(リレート)」へと昇華させようと試みました。ボリューム(量感)、フォルム(形)、そして色。これらが空間に静寂(Serenity)と構造的な美しさをもたらします。
規則正しいリブが生み出す「秩序」は、混沌とした現代社会において、家という空間に精神的な安らぎを与えてくれます。
空間にリズムを刻む2つの形状。「Valley」と「Hill」
DOCSコレクションには、9.5cm × 39.5cm というボーダー形状の中に、異なる2つの立体パターンが存在します。これらを組み合わせることで、無限のデザインパターンが可能になります。


1. Valley(ヴァレー / 谷)
その名の通り、谷のような深い溝(リブ)が刻まれたデザイン。
光を受けるとくっきりとしたシャープな影が落ち、力強い陰影を生み出します。リブタイルの王道とも言える形状で、モダンでスタイリッシュな印象を与えます。光の角度によっては、ストライプ柄のようにも見え、空間に規律をもたらします。
2. Hill(ヒル / 丘)
Valleyに対して、緩やかな起伏やフラットに近い面を持つ形状。
Valleyと組み合わせることで、「静」と「動」のリズムが生まれ、壁面に心地よい余白を作ることができます。全面をValleyにするのではなく、ランダムにHillを混ぜることで、抜け感のある洗練されたデザインが可能になります。
(※2つの形状を使い分けることで、単調になりがちな壁面に意図的な「崩し」を入れるのもテクニックです)
立体タイルの真骨頂!照明計画(ライティング)の極意
立体タイルを採用するなら、絶対にこだわりたいのが「照明計画」です。ただ明るくするのではなく、タイルの凹凸を活かすライティング計画が必須です。


1. グレージング(Wall Grazing)
壁のごく近く(壁際10〜15cm程度)にダウンライトやライン照明を設置し、壁に沿って光を擦るように落とす手法です。
リブの凹凸が影として強調され、テクスチャーがドラマチックに浮かび上がります。DOCSのようなリブタイルに最も適した手法で、ホテルのラウンジやエントランスで多用されます。
2. ウォールウォッシング(Wall Washing)
壁から少し離れた位置から、壁全体を均一に明るく照らす手法です。
影は柔らかくなり、空間全体が明るく広がりを感じさせます。洗面所など、作業灯としての機能も求められる場所では、グレージングよりもウォールウォッシングの方が視認性が良く、落ち着いた雰囲気になります。
DOCSのカラーパレットと空間スタイリング提案
DOCSは、建築的なフォルムを引き立てる洗練されたカラー展開も特徴です。ホワイトボディ(陶器質)ならではの発色の良さと、マットな質感が共存しています。スタイル別の活用術をご提案します。
Style 01. ホテルライク × Blue

使用色:DOCS Blue(Valley / Hill)
想定空間:ベッドルーム、バスルーム、パウダールーム
深みのあるブルーが、空間に静かな緊張感をもたらします。立体タイルのリブに光が当たることで、壁面には自然な陰影が生まれ、装飾に頼らなくても印象的な佇まいに。
ゴールドや真鍮など、やや温度のある金属素材を合わせると、冷たくなりすぎず、落ち着いたホテルライクな雰囲気にまとまります。床はホワイト系の大判タイルで色数を抑え、壁の存在感を引き立てるのがおすすめです。
Style 02. ジャパンディ × White & Wood

使用色:DOCS White(Valley / Hill)
想定空間:リビング、ダイニング、書斎のアクセントウォール
DOCSのホワイトは、フラットな白ではなく、陰影によって表情が生まれる色。漆喰壁を思わせる静けさがありながら、リブの立体感が空間にさりげないリズムを加えます。
オークやウォールナットなど、木の質感と組み合わせることで、北欧と和の要素が自然に溶け合うジャパンディスタイルに。主張しすぎず、長く付き合える壁として、暮らしの背景に静かに馴染みます。
Style 03. バイオフィリック × Green & Wood
使用色:DOCS Green(Valley / Hill)
想定空間:リビング、ライブラリー、インナーテラス
落ち着いたトーンのグリーンが、空間にやわらかな自然の気配を添えます。木製の棚や家具と合わせることで、人工素材でありながら、有機的で温度のある印象に。
壁一面に使うだけでなく、腰壁として取り入れることで、空間を分節しながらも圧迫感のない構成が可能です。静かに過ごすためのリビングやライブラリー空間とも相性の良いスタイルです。
採用前に知っておきたい!施工と技術のポイント
立体デザインタイルを検討する際、懸念されるのが「清掃性」や「施工難易度」です。プロの視点から解説します。
Q1. お手入れは大変ですか?
凹凸がある分、フラットなタイルより埃が溜まりやすいのは事実です。しかし、DOCSは表面に特殊な「LAYER TECH」加工が施されており、汚れが固着しにくくなっています。
日常のお手入れは、柔らかいブラシやハタキで撫でるだけで十分です。水回りでの使用時は、撥水剤などを塗布しておくと水垢防止になります。
Q2. 施工時の注意点(出隅の処理)は?
立体タイルで最も職人の腕が問われるのが「出隅(コーナー部分)」の処理です。
一般的な「トメ加工(45度カット)」は、リブの凹凸があるため難易度が高く、欠けの原因になりやすいです。
見切り材の使用: 真鍮やステンレスの細い見切り材を入れるのが最もスマートで耐久性があります。
役物の確認: 役物(コーナー専用タイル)の設定がない場合、断面が見えても美しいように、断面を研磨・塗装処理するケースもあります。事前に施工業者と「納まり」について打ち合わせることが重要です。
Q3. 目地の色はどう選ぶべき?
リブタイルの場合、目地を目立たせないのが基本です。
同色目地: タイルと同じ色を選ぶことで、リブの連続性が強調され、一体感のある壁面になります。
コントラスト目地: あえて濃い色の目地を入れると、1枚1枚の形状が際立ちますが、DOCSのような「流れ」を見せるデザインには不向きな場合が多いです。基本は「同色」推奨です。
作り手の思想を、そのまま届ける
Tile Capsuleは、世界のタイル文化を作り手の想いと共に「無添加」でお届けするキュレーションブランドです。
Sigfrido SerraがDOCSに込めた「住まいへの奉仕としての秩序の美」。
彼は言います。「プロジェクトごとのニーズを満たすだけでなく、デザインは生き物のように独自の個性を持ち、唯一無二の存在になるべきだ」と。
このDOCSコレクションは、流行りのデザインをただ取り入れるだけでなく、あなたの住まいに「思想」と「静寂」をもたらすためのツールです。
ただの壁が、記憶に残る風景へと変わる瞬間を、DOCSと共に体験してください。






