「トラバーチンとは何か」を調べると、温泉が生んだ天然石の解説と、オフィスや学校の天井によく見る「トラバーチン模様(岩綿吸音板)」の話が混ざって出てくることがあります。この2つはまったくの別物です。さらに近年は、天然石ではなく磁器質タイルでトラバーチンの表情を再現した「トラバーチン調タイル」という選択肢も広がっています。
この記事では、トラバーチンという石そのものの成り立ちから、天然石と磁器質トラバーチン調タイルの違い、大理石・ライムストーンとの見分け方、キッチンやバスルームなど場所別の使い方まで、Tile Capsuleが扱う輸入タイルの実例を交えて整理します。

1. トラバーチンとは?石の成り立ちと特徴
トラバーチンとは、温泉や地下水に溶け込んだ炭酸カルシウムが沈殿・堆積してできた天然石(石灰質の化学沈殿岩)です。堆積の過程でガスが抜けた跡が無数の小さな穴として残るため、表面に多孔質の質感と、木の年輪のような縞模様が生まれます。
この縞模様と穴の表情こそが、古代ローマの時代から建材として重宝されてきた理由です。トラバーチンは現在も床材・壁材として根強い人気があります。

1-1. 「トラバーチン模様=天井の岩綿吸音板」は呼称であり石材とは別物
「トラバーチン」で検索すると、オフィスや学校の天井によく見られる、無数の穴が空いた板材(岩綿吸音板)が「トラバーチン模様」と呼ばれて出てくることがあります。
これは天然石トラバーチンの多孔質な見た目に由来した”呼び名”であり、材質としては天井用の吸音材であって、本記事で扱う石材・タイルのトラバーチンとはまったくの別物です。混同しやすい点なので、最初に整理しておきます。

本記事で扱うトラバーチンは、床・壁・外壁に使われる天然石、および磁器質タイルでその外観を再現した「トラバーチン調タイル」を指します。
2. 天然石トラバーチン vs 磁器質トラバーチン調タイル
トラバーチンという言葉を調べる読者の多くは、天然石のトラバーチンタイルを想定しています。しかし実際の住宅・店舗づくりの選択肢としては、磁器質タイルでトラバーチンの表情を再現した「トラバーチン調タイル」も広く使われています。ここが本記事の核心です。
天然石そのものと、磁器質のトラバーチン調タイルは素材がまったく異なるため、吸水性・手入れ・価格の3点で性質が大きく変わります。

2-1. 吸水・目込みの有無
天然石のトラバーチンは多孔質であるため吸水率が高く、表面の穴に汚れや水分が入り込みやすい石材です。製品として流通する際は、穴の部分に樹脂やセメントを充填する「目込み(フィルド)」加工を施したものと、穴をあえて残した「アンフィルド」のものがあり、用途に応じて選び分けます。
一方、磁器質のトラバーチン調タイルは、トラバーチンの縞模様や質感をタイル表面に再現しつつ、本体は高温焼成された緻密な磁器質です。JIS規格上、磁器質タイルは吸水率3.0%以下(I類)に区分され、実際の製品では0.5%前後まで抑えられたものも多く、天然石のような目込み加工をしなくても水回りに使える低吸水性を備えています。
目地の充填自体は必要ですが、素地そのものに穴を埋める工程が要らない点が、天然石との大きな違いです。
2-2. 手入れ・耐汚染
天然石のトラバーチンは、油汚れやワインなどが穴に染み込みやすく、定期的な目地シーラーの塗布や石材用のメンテナンスが必要になります。多孔質な素地は経年で表情が変化しやすい反面、それを味わいとして楽しむ石材でもあります。
磁器質のトラバーチン調タイルは表面が緻密なため汚れが染み込みにくく、基本のお手入れは中性洗剤と水拭きで済みます。特別なメンテナンス周期を設けなくてよい点は、日常使いのしやすさとして評価されるポイントです。
2-3. 価格帯(トラバーチン 単価)
天然石のトラバーチンの単価は、産地・厚み・目込み加工の有無によって価格差が大きい素材です。断定的な金額を出しにくいため、実際に検討する際は取扱店で見積もりを確認するのが確実です。
一方、磁器質のトラバーチン調タイルは、天然石に比べて価格の幅が読みやすく、量産される磁器質タイルとして比較的安定した単価帯で流通しています。下の表に、天然石と磁器質トラバーチン調タイルの違いをまとめます。
| 比較項目 | 天然石トラバーチン | 磁器質トラバーチン調タイル |
|---|---|---|
| 吸水性 | 多孔質で吸水率が高い | 吸水率が低い(0.5%前後の製品も) |
| 目込み・目地 | 穴の目込み加工が必要な場合がある | 目地充填のみで施工可能 |
| 手入れ | 定期的な目地シーラー・石材用ケアが必要 | 中性洗剤と水拭きが基本 |
| 耐汚染性 | 油・ワイン等が染み込みやすい | 汚れが染み込みにくい |
| 単価の傾向 | 産地・加工で幅が大きい | 比較的安定した価格帯 |
| 水回りでの使用 | 目込み加工や施工条件を要確認 | 低吸水性で使いやすい |
3. 大理石・ライムストーン・砂岩との違い
トラバーチンは石目調タイルの中の一分類で、大理石・ライムストーン・砂岩と混同されやすい石材です。それぞれの成り立ちを整理すると、選び方の判断がしやすくなります。
3-1. 大理石
大理石は石灰岩が熱と圧力を受けて結晶化した変成岩で、磨くとガラスのような光沢が出て、はっきりとした濃淡の縞模様(ベイン)が特徴です。トラバーチンと同じ石灰質でも、大理石は緻密で吸水率が低く、トラバーチンのような多孔質の穴はほとんど見られません。
3-2. ライムストーン
ライムストーンは石灰岩そのものを指す言葉で、堆積してできた石灰質の岩石という点ではトラバーチンと成り立ちが近い石材です。ただしライムストーンは温泉由来の穴あき構造を持たず、粒子の細かい均一な表情が中心になります。ライムストーン タイルという呼び方は、この均一な石灰岩の表情を持つタイルを指すことが多く、トラバーチンの縞模様・多孔質な表情とは見た目の印象が異なります。
3-3. 砂岩
砂岩は砂粒が固まってできた堆積岩で、ざらついた粒状の質感が特徴です。トラバーチンの滑らかな縞模様とは表情がはっきり違うため、比較的見分けやすい石材といえます。
磁器質タイルの世界では、これらの石の表情を再現した「大理石調」「石目調」「ストーン調」というタイルが広く流通しており、トラバーチン調タイルもこの「〇〇調タイル」というカテゴリーの一つです。本体は磁器質タイルであり、天然石そのものではない点は変わりません。
4. 場所別の使い方と可否
天然石のトラバーチンと、磁器質のトラバーチン調タイルでは、使える場所の判断基準も変わってきます。
リビングの床:天然石・磁器質のどちらも人気の高い使い方です。天然石は経年変化を楽しめる一方、磁器質のトラバーチン調タイルは傷や汚れへの耐性が高く、日常使いのしやすさを重視する場合に向いています。
4-1. バスルーム・洗面所
水がかかる場所では、低吸水性の磁器質トラバーチン調タイルが扱いやすい選択肢です。天然石を使う場合は目込み加工の有無や防水下地の条件を事前に確認しておく必要があります。

4-2. 玄関
来客の目に触れる場所のため、トラバーチンの縞模様が高級感を出しやすい場所です。土砂や水分が持ち込まれやすいことを考えると、耐汚染性の高い磁器質タイルも選択肢に入ります。

4-3. 外壁・外床
天然石のトラバーチンは多孔質であるがゆえに、寒冷地では素地に染み込んだ水分が凍結して膨張する「凍害」のリスクがあり、外壁での採用には注意が必要とされています。磁器質のトラバーチン調タイルは吸水率が低いため、こうした凍害リスクを抑えやすく、外壁・外床での採用がしやすい素材です。

このように、天然石トラバーチンならではの風合いを楽しみたい場所と、低吸水性・耐汚染性を優先したい場所とでは、選ぶべき素材が変わってきます。
5. Tile Capsule 推奨製品:Sant’Agostino Invictus/Invictus Cross
トラバーチンの表情を再現した磁器質タイルとして、Tile CapsuleではSant’AgostinoのInvictus・Invictus Crossシリーズを取り扱っています。
5-1. Invictus(トラバーチン調)
Invictusは、トラバーチン特有の縞模様と多孔質な陰影を磁器質タイルで再現したコレクションです。床・壁のどちらにも使え、仕上げたい面と求める滑りにくさに応じて面状を選べます。



| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| カラー | BEIGE/IVORY/PEARL/WHITE(4色) |
| 面状 | KRYSTAL(艶あり)/NATURAL(マット)/ANTI-SLIP(防滑)/RIGATO(縦溝) |
| サイズ | 73×296/300×300/300×345/300×600/600×1200(大判)/900×1800mm(超大判) |
| 厚み | 9mm |
| 防滑(R値) | R10/R11(DIN 51130) |
| 寸法精度 | レクティファイド(焼成後に四方の側面を削って寸法精度を高めた製品。細い目地幅での施工に対応) |
| 異形 | Mosaico/Maxi Class Kry |
RIGATO面状の縦溝による陰影の出方は、リブタイル・立体タイルとは?フルーテッド・3Dタイルの種類でも紹介しています。
5-2. Invictus Cross
Invictus Crossは、Invictusと同じトラバーチン調の意匠をベースに、色幅を広げたシリーズです。無地のほかDECOの柄、複数色を混在させたMIXの展開があり、大判サイズまで揃うため、広い面積を少ない枚数で仕上げたい床・壁のプランに向いています。



| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| カラー | BEIGE/IVORY/PEARL/WHITE+DECO(柄)/MIX COLD/MIX WARM(計7色) |
| 面状 | KRYSTAL(艶あり)/NATURAL(マット)/ANTI-SLIP(防滑) |
| サイズ | 300×300/300×345/300×600/600×600/600×1200/1200×1200mm |
| 厚み | 9mm |
| 防滑(R値) | R10/R11(DIN 51130) |
| 寸法精度 | レクティファイド(焼成後に四方の側面を削って寸法精度を高めた製品。細い目地幅での施工に対応) |
| 異形 | Mosaico/Maxi Class Kry |
Invictus・Invictus Crossのベインカット/クロスカット、Rigato仕上げの活用、KRYSTALとNATURALの使い分けなど、より詳しい選定ポイントはトラバーチンタイルの決定版|INVICTUS & INVICTUS CROSS 完全解説で解説しています。
なお、Sant’Agostinoには大理石調のMystic・Trumarmi・Akoyaといったコレクションもあります。大理石調タイルの選び方はMystic(ミスティック)|イタリアの大理石調タイルで詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。
6. お手入れ方法(トラバーチン調タイルの掃除)
日常のお手入れは中性洗剤と水拭きで済みます。汚れが目立つ場合も研磨剤入りの洗剤や硬いブラシは避け、柔らかい布やモップで水拭きしてから乾拭きすると、光沢と質感を長く保てます。目地は経年で汚れが目立ちやすいため、目地シーラーの塗布や定期清掃を組み合わせると安心です。天然石のトラバーチンを使う場合は、多孔質な素地への浸透対策を施工業者に確認しておきましょう。
よくある質問
トラバーチンとは何ですか?
トラバーチンとは、温泉や地下水に含まれる炭酸カルシウムが沈殿・堆積してできた天然石(石灰質化学沈殿岩)です。表面に多数の小さな穴(多孔質)と、木の年輪のような縞模様があるのが特徴で、古代ローマの時代から建材として使われてきました。近年は磁器質タイルでこの表情を再現した「トラバーチン調タイル」も選択肢の一つになっています。
トラバーチンと大理石の違いは何ですか?
トラバーチンは石灰質が沈殿してできた堆積岩で、多孔質な穴と縞模様が特徴です。一方、大理石は石灰岩が熱と圧力で結晶化した変成岩で、緻密でガラスのような光沢とはっきりした濃淡の縞模様(ベイン)が特徴です。トラバーチンと大理石の違いは、簡単にいえば「多孔質で素朴な表情の堆積岩」か「緻密で光沢のある変成岩」かという点にあります。
トラバーチン模様のメリットは何ですか?
トラバーチンの縞模様と多孔質な質感は、他の石材にはない自然な奥行きと高級感を空間に与えます。磁器質のトラバーチン調タイルであれば、この表情を再現しながら低吸水性・耐汚染性も備えられるため、意匠性と日常の使いやすさを両立しやすい点もメリットです。
トラバーチンはキッチンに使えますか?
天然石のトラバーチンは多孔質のため、油はねやワインなどの汚れが染み込みやすく、キッチンで使う場合は目込み加工や定期的な石材用メンテナンスが前提になります。磁器質のトラバーチン調タイルであれば、吸水率が低く汚れが染み込みにくいため、キッチンの壁面(バックスプラッシュ)などに使いやすい選択肢です。
トラバーチンの単価はいくらですか?
天然石のトラバーチンの単価は、産地・厚み・目込み加工の有無によって幅が大きく、断定的な金額は示しにくい素材です。磁器質のトラバーチン調タイルは、量産される磁器質タイルとして比較的安定した価格帯で流通しており、天然石に比べて単価の見通しを立てやすい傾向があります。実際の見積もりは、取扱店やTile Capsuleへの問い合わせで確認することをおすすめします。
まとめ
トラバーチンとは、温泉由来の炭酸カルシウムが堆積してできた多孔質の天然石で、天井の「トラバーチン模様(岩綿吸音板)」とは別物です。
天然石のトラバーチンは風合いを楽しめる一方、吸水性が高く目込みや石材用のメンテナンスが必要になる場面があります。磁器質のトラバーチン調タイルは、低吸水性・耐汚染性を備え、水回りや外壁でも扱いやすい選択肢です。
大理石・ライムストーン・砂岩との違いを踏まえたうえで、Tile CapsuleのInvictus・Invictus Crossシリーズなら、床・壁どちらにも使えるトラバーチンの表情を磁器質タイルで取り入れられます。実際の質感は写真だけでは伝わりにくいため、サンプル請求で縞模様の出方や光沢感をご確認ください。
関連記事
- トラバーチンタイルの決定版|INVICTUS & INVICTUS CROSS 完全解説|Invictus/Invictus Crossの面状・カット・選び方の詳細
- リブタイル・立体タイルとは?フルーテッド・3Dタイルの種類|Invictus Rigatoの縦リブ表現
- Mystic(ミスティック)|イタリアの大理石調タイル|大理石調タイルの選び方
- 大判タイルとは?600角・900角・1200角の選び方(公開前)|サイズの定義と選び分け
- 浴室タイルの選び方とリフォーム(公開前)|浴室での使い方
- 玄関の壁タイルをおしゃれに|アクセントウォールのつくり方(公開前)|壁面での使い方
関連コレクション
この記事で紹介したタイルは、以下のコレクションからまとめてご覧いただけます。