浴室やキッチンの壁を、白いタイル以外で仕上げたい。そう考えて調べ始めると、たいてい同じところで足が止まります。色のある壁タイルは見つかるけれど、水まわりで使っていいのか判断がつかない。
イタリアの IMOLA CERAMICA(イモラセラミカ)の壁タイル「CROMIA(クロミア)」は、彩度を落とした7色を磁器質でそろえたシリーズです。テラコッタ寄りの赤から、セージグリーン、くすんだ青、深いモスグリーンまで。塗り壁のような色の深さを持ちながら、素地は吸水率0.5%以下。水まわりの壁を、色から決められます。

水まわりの壁を色で決めるという発想——本物の素焼きとの分かれ目
色のある壁タイルを水まわりで使うとき、最初に効いてくるのは素地の吸水性です。ここを整理しておくと選定が早くなります。
素焼きのテラコッタは多孔質で、水やよごれを吸い込みます。風合いが育つ代わりに、シーラーなどの手入れとつきあうことになります。対して磁器質は高温で焼き締められ、ほとんど水を吸いません。水と油がかかる壁では、この差がそのまま日々の掃除のしやすさになります。

一方で、時間が経つほどに風合いが増していく変化そのものを楽しみたい場所では、本物の素焼きのほうが応えてくれます。分かれ目は素材の格ではなく、水と手入れの条件です。本物のテラコッタとテラコッタ調の違いは、テラコッタタイルとは? で詳しく扱っています。
CROMIA はこの分岐の、磁器質側の選択肢です。適合規格は UNI EN 14411 – G BIa。この区分の要件は吸水率0.5%以下で、日本のJISでいえば I類(吸水率3.0%以下・旧称の磁器質にあたる区分)に相当します。CROMIA はその規格値に対して、さらに低い水準にあります。
なお CROMIA でテラコッタに近い色はアマレーナ1色です。残る6色はくすんだピンク、マスタード、アイボリー、セージグリーン、くすんだ青、深いモスグリーンと、赤からグリーン・ブルーまで色域が広く取られています。
150年分のアーカイブを持つメーカーが、色を選び直した
CROMIA を理解するには、この色がどこから出てきたのかを知るのが早道です。メーカーが語っているのは、自社の歴史的アーカイブが持つディテールと着想の豊かさを引き出し、緻密な色の探求によって古典と革新の対話を生むということ。結果として生まれたのが、洗練された7色の壁タイルのシリーズです。
つまりこの7色は、流行色を並べたものではありません。過去の蓄積から選び直された色という位置づけになります。そしてその「過去の蓄積」の厚みが、このシリーズの背景です。
ブランドの母体は Cooperativa Ceramica d’Imola S.C.。イタリア北部エミリア=ロマーニャ州、ボローニャ近郊のイモラという街を拠点とする会社で、150年以上タイルをつくり続けてきました。日本のタイル業界ではあまり見ない協同組合という組織形態です。アーカイブから色を引き出すという発想が成立するのは、引き出せる量があるからこそ成立する発想です。
「古典と革新の対話」という CROMIA のコンセプトは、この会社の自己規定と地続きです。カタログは IMOLA というブランドを「fare=つくることに捧げたブランド」と表現し、その拠りどころを歴史との結びつきと更新し続ける願望の均衡に置いています。前を向く言葉(FARE FUTURO/英訳 “BUILDING THE FUTURE is OUR KNOWHOW”)を掲げながら過去のアーカイブを掘り返す、という一見ねじれた動きが、この会社では一貫している形です。
組織としては、品質・環境・労働安全衛生の3領域で UNI EN ISO 9001 / 14001 / 45001 を取得しています。

ベタ塗りの単色にはならない——面のつくり
7色はいずれも彩度を落とした中間色で、面積を大きく取っても色が主張しすぎない方向にそろえられています。ただし単色で塗ったような平坦さにはなりません。理由は面のつくりにあります。
素地は彩色通体(color body)。白素地ではなく、素地自体に色が入っています。小口が見える納まりや欠けが生じたときに、白い断面が出てきません。エッジはレクティファイド、つまり焼成後に端部を削って寸法精度を高めた仕様です。削るのは端部だけで表面はマットのまま、目地を細めに通して面で見せる張り方に向きます。ただし目地なしの突きつけは、寸法誤差や地震時の動きを逃がせないため業界では非推奨です。
表面のつくりは2層です。ひとつはやわらかな凹凸(ストラクチュア)で、光を均一に返す平滑面ではなく、光の当たり方で濃淡が動きます。もうひとつがクラクレ(craquelé=貫入)調の表情で、釉薬に細かなひびを走らせたような線が面に入ります。一色で壁を張っても平坦に見えないのは、この2つが重なっているからです。

CROMIA 全7色——各色の表情と使い方
色名は色番のような記号ではなく、食べものや自然物から取られています。いずれも彩度を落とした中間色です。

AMARENA
アマレーナ/テラコッタ寄りの赤

MALVA
マルヴァ/くすんだピンク

MANGO
マンゴー/マスタード寄りの黄

BURRO
ブッロ/アイボリー

PEPE
ペペ/セージグリーン

MARE
マーレ/くすんだ青

AVOCADO
アヴォカド/深いモスグリーン
色ごとの使い分け。 アマレーナは壁一面に通すと空間の主役になり、レンジフードまわりまで含めて色で決められます。アマレーナとマルヴァは同系なので、腰の高さで上下に張り分けると濃淡で水平のラインが生まれます。マンゴーはモザイクで細かく割ると面全体が光の粒のように見え、彩度を落とした緑と合わせると互いを引き立てます。ブッロは表面の凹凸が拾う影だけで面が成立する色で、白タイルを避けたいが色は主張させたくない壁に向きます。ペペは木部やラタンと合わせやすく、浴室を落ち着かせる方向に効きます。マーレは木目調の床と組むと青と木の対比が空間の骨格になり、アヴォカドは細長いヘキサゴンで張ると、目地の線が陰影として際立ちます。
7色とも下表のサイズがそろいます。Q面は600×1200mmのみの設定です。
| 色 | 600×1200 フラット | 600×1200 Q面 | 300×600 |
|---|---|---|---|
| AMARENA | AMARENA6 12 | AMARENA6 Q12 | AMARENA6 36 |
| MALVA | MALVA6 12 | MALVA6 Q12 | MALVA6 36 |
| MANGO | MANGO6 12 | MANGO6 Q12 | MANGO6 36 |
| BURRO | BURRO6 12 | BURRO6 Q12 | BURRO6 36 |
| PEPE | PEPE6 12 | PEPE6 Q12 | PEPE6 36 |
| MARE | MARE6 12 | MARE6 Q12 | MARE6 36 |
| AVOCADO | AVOCADO6 12 | AVOCADO6 Q12 | AVOCADO6 36 |
モザイクは2種のシートがあります。
| 色 | 300×300 モザイク | 282×265 ヘキサゴン |
|---|---|---|
| AMARENA | MK.AMARENA6 30 | MK.AMARENA6 HX |
| MALVA | MK.MALVA6 30 | MK.MALVA6 HX |
| MANGO | MK.MANGO6 30 | MK.MANGO6 HX |
| BURRO | MK.BURRO6 30 | MK.BURRO6 HX |
| PEPE | MK.PEPE6 30 | MK.PEPE6 HX |
| MARE | MK.MARE6 30 | MK.MARE6 HX |
| AVOCADO | MK.AVOCADO6 30 | MK.AVOCADO6 HX |
面の表情を選ぶ——フラット面、立体のQ面、花柄のデコール
同じ色のなかで、面のつくりを選べるのがこのシリーズの見せ場です。
フラット面
柄を入れず、色と質感だけで見せる無地の面。ただしつるりとした平滑面ではなく、やわらかな凹凸にクラクレ調の細かなひびが重なった表情が入ります。壁を静かに成立させたいとき、造作や照明を主役にしたいときはこちらです。

Q面(立体レリーフ)
1枚の中に「細かな点の網目」「格子」「細いリブ」「ヘリンボーン(ジグザグ)」の4種のレリーフが帯状に並ぶ立体面です。1種類のリブタイルを繰り返し張るのとは違い、1枚ですでにリズムが完成しています。同じ色のフラット面と混ぜて張れるので、腰壁だけ、あるいはレンジフードまわりだけ立体にする、といった使い分けができます。
Q面が用意されているのは 600×1200mm のみです。300×600mm や2種のモザイクはフラット面のみなので、立体面をどの壁に使うかと割付を、先に決めておくと手戻りがありません。

花柄のデコール(CROMIA6 DK12)
600×1200mmで2柄の装飾タイル。大輪の花を描いた、いわゆる花柄です。花柄を壁に入れたいとき、選択肢はふつう壁紙になりますが、水まわりでは貼れる場所が限られます。タイルで花柄を張れる、というのがこのデコールの立ち位置です。

CROMIA 形状一覧——矩形2サイズ、モザイク2種、デコール
CROMIA の形状は矩形2サイズとモザイク2種、それに花柄のデコール。厚みはすべて6.5mmでそろっています。同じ色で形状を変えられるので、面ごとに割付の細かさを調整できます。
いずれも MARE(くすんだ青)で、形状ごとの表面の見え方です。

600×1200 フラット
矩形・厚6.5mm。目地を減らして面で見せる

600×1200 Q面
矩形・厚6.5mm。4種のレリーフが帯状に並ぶ立体面

300×600
矩形・厚6.5mm。割付を細かく取りたい面へ

300×300 モザイク
細長い短冊状のシート・厚6.5mm

282×265 ヘキサゴン
細長い六角のシート・厚6.5mm

600×1200 デコール
大輪の花柄・2柄(CROMIA6 DK12)
| 形状 | 寸法(mm) | 面のバリエーション | 向く使い方 |
|---|---|---|---|
| 矩形(大) | 600×1200 | フラット/Q面/デコール2柄 | 目地を減らして壁を面で見せる |
| 矩形(小) | 300×600 | フラット | 割付を細かく取りたい面 |
| 短冊モザイク | 300×300(シート) | フラット | キッチンの背面など面積の小さい面 |
| ヘキサゴンモザイク | 282×265(シート) | フラット | 面の分割を見せる |
Q面とデコールは前述のとおり600×1200mmのみの設定です。
全形状6.5mmという薄さは、サッシや建具、設備の芯位置が動かせない改修で効いてきます。ただし既存の仕上げの上に張る納まりが成立するかは下地の状態と接着剤の仕様によって変わるため、施工方法は個別にご相談ください。
CROMIA でつくる空間——キッチン、洗面、浴室
キッチンでは、背面をモザイクで細かく割る使い方が効きます。7色のなかで最も光を返すマンゴーを細かい目地で張ると、面全体がテクスチャとして見えてきます。

洗面まわりでは、同系色を上下で張り分ける手が使えます。アマレーナとマルヴァのように濃淡のある2色を腰の高さで切り替えると、壁に水平のラインが生まれます。

浴室では、壁を1色で通して面として見せる方向が向きます。グリーンは灰味を帯びた淡いペペと、暗く沈む深いアヴォカドの2色。ペペは木部や石の床と競合せず、壁を静かに成立させます。

床に木目を持ってくる場合は、同じ IMOLA CERAMICA の木目調タイル「MOTHER(マザー)」が組み先です。カタログでも壁のCROMIAと床のMOTHERを組んだ提案が載っており、色のある壁と木目の床という組み合わせは、メーカー側が想定している使い方です。

濃い色をヘキサゴンのモザイクで張ると、面の分割が陰影として際立ちます。六角形タイルの張り方や割付の考え方は、ボウクス タイルマーケットのヘキサゴンタイル特集もあわせてご覧ください。

よくあるご質問
Q. 浴室の壁に使えますか?
UNI EN 14411 – G BIa(吸水率0.5%以下)に適合する磁器質で、メーカーも浴室の壁のシーンで提案しているシリーズです。採用にあたっては、下地・防水の仕様と施工方法をあわせてご確認ください。
Q. 床にも使えますか?
CROMIA はメーカーのカタログで壁タイルのプロジェクトとして位置づけられているシリーズです。床は床用のシリーズを合わせる考え方になります。同じメーカーなら木目調タイルの「MOTHER(マザー)」が選択肢です。床への検討がある場合は、滑り抵抗の値をメーカーに確認したうえでご案内しますので、用途と下地条件を含めてご相談ください。
Q. 本物のテラコッタと並べたら違いは分かりますか?
素焼き特有の吸水による色の沈み方や、経年で育つ風合いは磁器質では再現されません。一方で表面には焼きものらしい細かな起伏があり、均一な工業製品には見えない面になっています。「風合いを育てたいか、手入れを軽くしたいか」で分かれる選択です。
Q. 狭い壁でも使えますか?
300×600、300×300モザイクシート、282×265モザイクシートがあるので、面積の小さい壁でも割付が組めます。仕上げ厚を薄く抑えたい壁にも向きます。
Q. フラット面とQ面は混ぜて張れますか?
同じ色でフラット面とQ面が用意されているため、混ぜて張れます。壁の一部だけ立体にする、腰から上をフラットにするといった張り分けが、色を変えずに成立します。ただし Q面があるのは600×1200mmのみです。300×600mmやモザイクと組む場合は、立体面を600×1200mmで取れる面かどうかを先に確認してください。
Q. 色は実物で確認できますか?
7色はいずれも彩度を落とした中間色で、画面の色再現に差が出やすい色域です。とくに PEPE(セージグリーン)と MARE(くすんだ青)は、照明で見え方が変わります。ご検討中の色とサイズをお知らせいただければ、ご用意の可否を含めてご案内します。
サンプル請求・お問い合わせ
色の見え方は、面の凹凸と照明で決まります。7色から絞る段階に入ったら、実際の空間の光でサンプルを見比べるのが確実です。
CROMIA のサンプル請求・ご相談 — ご検討中の色とサイズをお知らせいただければ、ご用意の可否を含めてご案内します。
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